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色彩理論に縛られすぎないこと

2021.05.31

錦鯉の写真


自分の個性を生かし、ステキに着こなすために、色彩理論を学ぶことは有効な一つの方法です。
色相環の配列、寒色系と暖色系の組み合わせ、明度と彩度の度合いによる組み合わせなど、スタイリストであれば学んでいることでしょう。

もともとの色彩理論は、紀元前4世紀の古代ギリシャから始まりましたが、現在使われている色のほとんどが、19世紀に入ってからつくられたといわれます。
ヨーロッパの色彩文化がアメリカにわたり、実用性を重んじる彼らの手によって着こなしのためのシステムが多くつくられました。
肌の色のタイプに合わせて色を選ぶシステムもアメリカ発です。

では、日本の色彩文化はというと、7〜8世紀から始まったといわれます。
日本最古の歌集「万葉集」から多彩な色合いが使われていたことがわかります。
ここで注目したいのは、日本で古くから使われていた植物染料は、重ね染めや交織りなど混色が行われ、微妙な濃淡で独特の中間色文化が発達したことです。
「侘(わび)」「寂(さび)」といわれる枯淡の美学がそれです。

いっぽう、ヨーロッパでは色を混ぜ、中間色をつくることは神への冒涜とされ、それらの色は二流の色とみなされました。
しかし、日本では混色が高貴な色とされたのです。

色相環のイラスト


つまり、いくら現代は洋服の世界とはいえ、欧米の色彩理論をそのまま取り入れることは文化的背景が違うわけですから、無理があると思うのです。
しかも、私たち黄色人種は肌の色自体が欧米の人たちと違います。彼らの装いをそのまままねても、ちょっとずれた見た目の印象になってしまう場合もあります。

その色は着てはダメとか、色わけしたグループ同士の色でないと組み合わせてはダメなどというのはある程度取り入れても、ときには冒険してみることも大切です。

もちろん、たとえば、赤と緑、紫と黄色のような補色同士は、波長が異なることから同時に並べればそれぞれの波長が喧嘩します。音と音のように、色と色にも不協和し合う組み合わせがあることは、覚えておくに越したことはありません。

しかし、季節ごとの街並みや自然を眺めながら、感性で着たいと感じる服を着る。
大切なのは、配色や全体に占めるその色の分量、形など総合的なバランスなのです。


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